メラトニンって何?
メラトニンって何?
メラトニンは、私たちの体の中にもともと存在するホルモンで、脳の奥にある松果体というところで作られています。
一般的に「睡眠ホルモン」と呼ばれています。
メラトニンは、決して強制的に眠らせる物質ではありません。
体に、
「そろそろ夜ですよ、休む時間ですよ」
と知らせる 体内時計の合図 という表現がよく当てはまると思います。
光と体内時計の関係
私たちの目に入った光の情報は、脳の中の 体内時計 のカナメとなる場所へ伝わります。
朝や昼 の明るい時間帯には、メラトニンの分泌は減ります。
逆に
夜 の暗い時間帯には、メラトニンの分泌は増えます。増えると、体が眠りに向かう準備を始めるのです。
つまり、メラトニンは単独で働くのではなく、
光·暗さ·生活の中での 行動のタイミング と連動して、
眠り と 目覚め のリズム(睡眠と覚醒のリズム)を 整えて いるのです。
そのため、夜遅くまで強い光を浴びる生活や、起床·就寝時刻が大きく乱れる生活では、
体内時計 と 実際の生活 とのずれ が起こりやすくなります。
「飲めば眠りが 強く なるホルモン」ではありません
メラトニンは、脳の働きを強く抑え込んで眠らせるタイプの物質ではありません。
主な役割は、眠らせる強さよりも、
- 眠る時刻
- 起きる時刻
- 昼と夜の切り替え
を調整することです。
したがって、「深い眠りを直接つくるホルモン」というより、眠りに入りやすい時間帯を体に知らせるホルモンと表現する方が正確です。
ロゼレム®はメラトニンそのもの?
いいえ、違います。
ロゼレム®の有効成分であるラメルテオンは、メラトニンそのものではありません。メラトニンが作用する受容体のうち、主に睡眠と体内時計に関係する受容体へ作用する メラトニン受容体作動薬 と呼ばれる薬です。
日本で、医師が処方する 医療用のロゼレム®は、不眠症における入眠困難の改善を目的として使用されています。
つまり、
メラトニン=体内で作られるホルモン
ロゼレム®=メラトニンと同じ受容体に働きかける薬
という違いがあります。
なぜ慢性疼痛で注目されているの?
慢性疼痛では、
痛くて眠れない
↓
眠れないことによる「キツい!しんどい!もう嫌!!」という強い不快感から、痛みを強く感じる
↓
「また今日も眠れない!」とさらに眠れなくなる…。
という悪循環が起こることがあります。
さらに近年、メラトニンは睡眠を整えるだけでなく、脳や神経が痛みを調節する仕組みにも関係する可能性が研究されています。
線維筋痛症の患者さんを対象としたランダム化比較試験では、メラトニンを使用した群で痛みや生活への影響が改善し、脳が痛みを抑える仕組みである下行性疼痛抑制系の働きにも改善がみられました。
ただし、これは線維筋痛症についての研究です。
現時点では、メラトニンやロゼレム®が舌痛症そのものに有効であることを証明した臨床試験はありません。
したがって、舌痛症に対して「メラトニンが効く」と断定することはできませんが、睡眠障害を伴う慢性疼痛という観点から、今後の研究が期待されています。
まとめ
メラトニンは、単なる「眠らせるホルモン」ではありません。
体に夜の到来を知らせ、睡眠と覚醒のリズムを整えるホルモン
です。
そして現在では、睡眠だけでなく、痛みを調節する神経の働きとの関係についても研究が進められています。
ただし、舌痛症への有効性はまだ証明されていないため、期待されている作用と、現在確認されている医学的根拠を分けて考えることが大切です。
執筆・監修:医師 小林由希
BMSpedia Project